民法が定める離婚原因

夫あるいは妻と離婚したいと考えている場合、相手の配偶者も離婚することに同意している時には、離婚すること自体に争いはないので、あとは離婚条件だけを決めていくことになります。

しかし、相手の配偶者が離婚を望んでいない場合、協議離婚や離婚調停で離婚することは困難となります。これらの離婚方法は、相手の配偶者と離婚すること自体に争いがないことを前提としているからです。

離婚調停がまとまらない場合、最終的には裁判で離婚するかを決めることになります。裁判官が当該事件について、離婚判決を下せるのは、民法の定める離婚原因がある場合となります。

民法は、離婚原因として、「配偶者に不貞な行為があったとき。」(民法第770条1項1号)、「配偶者から悪意で遺棄されたとき。」(民法第770条1項2号)等に加え、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法第770条1項5号)を定めています。

とりわけ、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法第770条1項5号)という離婚原因は抽象的な文言であり、具体的にどのような場合に同号に該当するかが問題となってきます。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法第770条1項5号)の該当性が問題になる場合として、例えば、(1)「性格の不一致」や、(2)「夫あるいは妻が多額の借金をした場合」等があります。

性格の不一致

まず、(1)「性格の不一致」についてですが、夫婦が離婚する理由として一番多いとされるのが、性格の不一致であるとされています。

前述のように、性格の不一致からお互いが離婚しようということになれば、協議離婚や調停離婚によって離婚することがきます。しかし、裁判になった場合、「性格の不一致」が離婚原因となるのでしょうか。

裁判例(水戸地裁昭和54年4月24日判決)においては、「性格の相違がそのまま離婚原因になるとは婚姻の性質上直ちに認め難いところである」としています。これは、大なり小なり夫婦は互いに別人格である以上、性格が違うのは言わば当然であるため、性格の不一致という理由のみで離婚原因とすることはできないということです。

他方で、上記裁判例は、「婚姻は両性相互の協力、扶助により維持すべきもので、相手の性格に対する思いやりを欠き、相手方の協力要請に応ぜず、自己中心で相手方を無視ないし冷遇するような態度を取ることにより、相手方が婚姻継続の意思を失うに至ったような場合には、右破綻の原因に相手方の性格が若干寄与しているとしても、前記のような態度をとった者に主としてその破綻の原因が存するものというべきである。」とし、配偶者に対する思いやりのなさ、配偶者を冷遇ないし無視したこと、家業の薬局経営やその経済状態について何ら相談しなかったこと、日常の夫婦としての意思疎通、会話を求める配偶者の要請を受け付けず、その結果明確な理由もわからないまま先代からの家業を倒産に至らせたこと等を理由に、夫婦の婚姻破綻を認め、離婚判決が下されています。

このように、単なる性格の不一致を超えて、上記のような事情がある場合には、離婚が認められる余地がありそうです。

配偶者の多額の借金

次に、(2)夫あるいは妻が多「額の借金」をしたことが「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法第770条1項第5号)に該当するかという問題です。

「借金」といっても、パチンコや競馬のようなギャンブルにはまって借金をするような場合と家族のために住宅ローンや子供の学費を出すための借金等、様々です。

民法第752条は、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と規定しています。

この規定に反するような経緯や使途の多額の借金の場合には、婚姻関係破綻とされる場合があるようです。

例えば、家事審判例(東京家庭裁判所昭和41年4月26日審判)では、妻が競馬にはまってしまい毎月競馬に費消していたこと、夫に無断で夫から受領する給料で不必要な衣類、時計、貴金属類を月賦販売会社から購入し、その月賦代金の支払が終わらないうちに、これらの物品を入質して現金を借用し、その現金を浪費したこと、度重なる妻の浪費等の非違行為により夫は借金の返済に追われ、一家は生活難となっていること、妻に真に生活態度を改めていくよう努力する気配が見られない等の事情がある事案において、浪費等の度重なる非違行為は、婚姻を継続し難い重大な事由に該当するとされました。

他方で、別の裁判例(仙台地方裁判所昭和60年12月19日判決)においては、借金の問題以外には婚姻生活を継続していく上で特に支障となるような事情は全くなく、借金の返済もいわゆる共働きにより借金の返済も生計の維持も楽になるものと考えられること、その借金自体もそれが主たる原因は被告の弟の大学進学や被告と原告の結婚等であるという事案において、婚姻を継続し難い重大な事由があるとは到底認められないものであるとされました。

このように、「借金」といっても、借金の目的や使途、借金をするに至った経緯、夫婦の借金返済能力等を総合的に判断して、「婚姻を継続し難い事由」に該当するか否かを判断するようです。

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